尿の検査
尿蛋白
1.何がわかるか-----基礎知識
正常の人でも1日に40〜120mgの蛋白を尿に排泄しています。1日に150mg以上の場合を異常とします。
尿蛋白が増加する場合は次のようなものがあり、尿蛋白検査はその診断のきっかけをつくるものです。
正常の人の増加:運動や発熱により正常人でも増加します。
体質性蛋白尿(起立性蛋白尿):若者などにみられる良性の蛋白尿。起立により腎静脈が圧迫されて起こるもので、特に心配ない。
病的蛋白尿
腎臓障害によるもの:腎炎、ネフローゼなど
尿路性のもの:尿路感染症、結石、腫瘍
その他:血中蛋白が濾過されたものなど
検査詳細情報
2.異常値-----疑われる病気や異常
急性・慢性腎炎
腎盂腎炎
ネフローゼ症候群
尿管・膀胱・尿道の炎症や結石・腫瘍
妊娠中毒症(妊娠中に尿蛋白が多量に出て、むくみがひどく血圧が高い時)
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
尿蛋白の検査は、腎臓病などの病気の発見のきっかけをつくるものです。また、正常の人でも(+)となることもあります。必ず再検するなり、詳しくその原因を調べてもらってください。
軽度の蛋白尿のみで他に異常が見られない場合は、定期的に検査を受け、経過を観察すればいいでしょう。
尿 糖
1.何がわかるか-----基礎知識
一般に試験紙法で調べます。この場合、尿の中のブドウ糖(グルコース)の有無を調べ、糖尿病のスクリーニング検査を主目的とします。
正常の人でも10〜30mg/dlのブドウ糖の排出があります。多くの試験紙の感度は30mg/dl以上ですので、(±)以上は異常と考えます。
血液中のブドウ糖は腎臓の糸球体で濾過されて尿細管に出ますが、通常そこで再吸収され、尿にはほとんど出てきません。尿細管に出てくる糖が多くなり、尿細管での再吸収が間に合わなくなると(糖尿病などで血糖が160〜180mg/dl以上の場合)尿に糖がでます。
血糖がそれ以下(すなわち糖尿病でなくても尿細管の再吸収の能力が体質的に少ない人)でも尿に糖が出ることがあります。これを腎性糖尿といいます。
検査詳細情報
2.異常値-----疑われる病気や異常
糖尿病
腎性糖尿
妊娠
ホルモンの病気
中毒
脳の病気
胃切除
肝・腎臓病
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
陽性の場合は、血糖検査などをして糖尿病かどうかを調べてもらいます。
腎性糖尿は、通常治療の対象となりません。定期的に検査をして経過を観察します。
尿潜血
1.何がわかるか-----基礎知識
試験紙で検査しますが、いずれもヘモグロビンの反応を検出するようになっており、基本的には赤血球が尿に異常に出た場合に陽性となります。すなわち、血尿の有無を調べるスクリーニング検査です。
赤血球以外に直接ヘモグロビンが尿にでる病気や、ミオグロビンでも反応して陽性となります。
種々の薬(メチシリンなどの抗生物質、サルファ剤、降圧利尿剤など)で偽陽性となるし、逆にビタミンCの過剰摂取では偽陰性となります。
血尿は、種々の病気でみられ、潜血検査はこれらの病気の発見の糸口となるものです。
検査詳細情報
2.異常値-----疑われる病気や異常
腎臓や尿路の炎症:腎盂腎炎、尿道炎、膀胱炎、前立腺炎、急性腎炎
腎臓や尿路の結石、腫瘍
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
生理時などをはずして再検するか、または、尿の沈渣の検査を行って赤血球の有無を調べてもらいます。赤血球がない場合はまれにヘモグロビン尿、ミオグロビン尿という病気のことがあります。
尿に赤血球が出ている場合は、その原因を詳しくしらべてもらいます。
尿沈渣
1.何がわかるか-----基礎知識
尿の中の赤血球、白血球などの細胞や結晶、細菌などを調べます。
尿を遠心器で回し、成分を沈殿させて、それを顕微鏡で調べます。
正常では、これらの成分はほとんどみられません。これらの成分が増加しているときは、腎炎、腎臓や尿路の感染、腫瘍、結石などを疑ってさらに詳しく調べます。尿沈渣検査は、これらの病気の有無のスクリーニング検査です。
検査詳細情報
2.異常値-----疑われる病気や異常
赤血球が増えた場合
腎臓や尿路の炎症:腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、前立腺炎、急性腎炎
腎臓や尿路の結石・腫瘍
全身疾患の出血傾向:白血病、紫斑病、血友病
白血球が増えた場合
腎臓や尿路の炎症
白血病
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
異常の場合、再検します。
それでも異常であれば、腎臓や尿路の詳しい検査を受けて下さい。
排尿痛や頻尿があり、尿に白血球や赤血球が出ている場合は、膀胱炎が最も考えられます。なるべく早く治療を受けて下さい。
尿ウロビリノーゲン
1.何がわかるか-----基礎知識
ウロビリノーゲンは、肝臓から胆汁として十二指腸へ排出されたビリルビンが、腸の中の細菌によって還元されて作られます。その一部は腸から吸収され、大部分は肝臓で再びビリルビンとなりますが、一部は腎臓から尿に出てきます。
肝障害があるとビリルビンに戻りにくく、尿へ多く出てきますので、肝機能を知る検査として用いられてきました。しかし現在では、その他の正確な肝機能検査の方法があるため、その意義は少なくなっています。
その他、溶血性貧血などで増加します。
胆汁が少ない病気(胆汁うっ滞)では(-)となります。
正常の人では、尿に0.03〜1.0mg/dl排泄されており、試験紙の感度は1mg前後ですので、正常値は、(±)となります。
検査詳細情報
2.異常値-----疑われる病気や異常
増えた場合
肝臓の障害
赤血球が壊れる病気:溶血性貧血など
心臓の病気
がんこな便秘
薬剤:サルファ剤、パラアミノサリチル酸、アドナなどの影響による
減った場合
胆石
総胆管閉塞
抗生物質の長期服用
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
異常な場合、肝障害、溶血性貧血、胆汁うっ滞の有無を調べます。
これらに異常がみられない場合は、経過観察をします。
尿量
1.何がわかるか-----基礎知識
腎臓はからだの不用になった水分や老廃物を尿として排泄し、体液の水分や成分を調節しています。
しかし、腎機能の障害や、血液の濃さや尿量を調節するホルモンに異常がおこると、尿量が大幅に変化します。
そこで1日の尿量を測り、からだの異常を調べるのが尿量検査です。
2.異常値-----疑われる病気や異常
少ない場合
火傷、外傷、吐血、下痢
心臓病
敗血症
慢性腎不全
尿路の悪性腫瘍
多い場合
尿崩症
心因性多尿
急性腎不全
糖尿病
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
乏尿や無尿は危険な状態ですからねすぐに入院しなくては、いけません。
多尿の場合も、治療の困難な病気が隠されていることがあります。病院での精密検査が必要です。
尿比重
1.何がわかるか-----基礎知識
腎臓は、血液をろ過して体内の不用物や余分な水分を尿として排泄し、体液の水分や成分を調節しています。
したがって、尿の中には尿素や窒素などのほか、ナトリウムやクロールなどの電解質が含まれているため、尿の比重は水より高くなっています。
腎臓は、濃い尿や薄い尿をつくって体内の水分を調節します。
そのため、腎臓の働きに障害が起こると、尿が普段よりも濃くなったり、薄くなったりして、比重が大きく変わります。
2.異常値-----疑われる病気や異常
低い場合
慢性腎炎
尿崩症
高い場合
心不全
糖尿病
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
まず、脱水症や心不全、糖尿病など、異常値の原因となる病気の治療が大切です。
尿比重が常に、1.012以下なら腎機能検査や抗利尿ホルモン検査などの、内分泌検査が必要となります。