• 交通事故や大手術のときのように、大量の出血を伴う場合や、血液の病気の治療を行う場合に、輸血は重要な役割を果たしています。
• ところが、血液型にはいろいろな型があり、輸血する人の血液と輸血される人の血液が適合しない場合、免疫反応によってさまざまな副作用が生じます。
• こうした輸血などでの事故を避けるため、血液型の検査はかかすことができません。
• 現在、血液型の判定法として１６の型式が知られていますが、その中でも、輸血に最も関係があるのは、ＡＢＯ式とＲｈ式の２つです。

検査詳細情報(ABO)

検査詳細情報(Rh)

• ＡＢＯ式血液型判定法
  • Ａ型血液の場合、赤血球の表面にＡ抗原という膜があり、血清中にはＢ型血液を固めてしまう抗Ｂ凝集素といわれる抗体が含まれています。
  • Ｂ型血液は、Ｂ抗原と、Ａ型血液を固める抗Ａ凝集素という抗体を持っています。
  • したがって、Ａ型とＢ型の血液が混ざると、抗原抗体反応により血液が固まったり、溶血による赤血球の破壊をおこしたりします。
  • このほか、Ｏ型血液には、抗原はありませんが、抗Ａ，Ｂ凝集素の両方があります。
  • ＡＢ型血液には、Ａ，Ｂ抗原ともありますが、抗Ａ，Ｂ凝集素ともありません。
  • ＡＢＯ式では、こうした反応を利用して、赤血球の抗原と血清中の凝集素が、どんな組み合わせで固まるかを調べ、下図のようにして血液型を判定します。
  
  
  

  ＡＢＯ式血液型判定法

  
  
  
• Ｒｈ式血液型判定
  • Ｒｈ式血液型判定は、ＡＢＯ式とは別の抗原を用いた判定法です。
  • 赤血球にはＤ抗原（Ｒｈ抗原）という抗原をもつものと、持たないものがあります。
  • Ｄ抗原を持つ、Ｒｈ（＋）の人の血液と、もたないＲｈ（−）の人の血液を混ぜると、抗Ｄ抗体という抗体が出来ます。
  • この抗体にはＲｈ（＋）の人の血液を固めたり、溶血させたりする働きがあります。
  • 従って、一度抗Ｄ抗体が出来ると、Ｒｈ（−）の人にはＲｈ（−）の人しか輸血できません。
  • さらに、夫がＲｈ（＋）、妻がＲｈ（−）の子供がＲｈ（＋）の場合には、第２子以後、母子間で血液の不適合による重症黄疸がおこります。こうした場合には、予防注射や出産直後の交換輸血によって、障害を防ぐことができます。

• Ｏ型の赤血球は、他の型の血液と混ぜても固まりません。
• そのため、Ｏ型の血液はどの血液型の人にも輸血出来ると考えられてきました。
• しかし、近年では、他の型の血液の人にＯ型の血液を輸血すると、赤血球が壊れてしまうということがわかり、今では同じ血液型の人同士の間でしか輸血が行われなくなりました。
• さらに、最近さかんになった臓器移植の場合には、赤血球だけでなく、白血球や血小板についても型を検査するようになっています。

• 肝臓障害の原因にはアルコールやＡ型肝炎（ＨＡ）、Ｂ型肝炎（ＨＢ）、Ｃ型肝炎（ＨＣ）などのウイルスがあります。
• 中でも、Ｂ型肝炎ウイルスは、急性肝炎、慢性肝炎から肝硬変、さらに肝癌へと病気を進行させるウイルスとして、恐れられています。
• このウイルスに感染しているかどうかを調べるのが、ＨＢｓ抗原・抗体検査です。
• ＨＢｓ抗原やＨＢｓ抗体が血清中から確認されれば、Ｂ型肝炎ウイルス感染者として診断されます。
• しかし、ＨＢｓ抗原が確認されても、免疫が働かずＨＢｓ抗体が作られない場合は、肝細胞も破壊されないので、肝炎が発病しない事もあります。
• これを、無症候性キャリアと呼んでいます。日本では、このキャリアが約200〜300万人といわれています。
• そのためＨＢｓ抗原・抗体検査はね急性肝炎や慢性肝炎、肝硬変、肝癌の診断だけでなく、キャリアかどうかの確認のために、さかんに用いられています。
• Ｂ型肝炎ウイルスは、とくに血液を通じて感染します。
• そのため、輸血時の感染や、出産時の母子感染を防ぐための検査として、欠かせないものとなっています。

検査詳細情報(抗原)

検査詳細情報(抗体)

• 急性肝炎
• 慢性肝炎
• 肝硬変
• 肝癌

• ＨＢｓ抗原が陽性の場合は、Ｂ型肝炎ウイルスについて、さらに詳しい検査が必要です。
• ウイルスの核を作っているＨＢｓ抗原は、感染力が強いため、その抗原と抗体を測定し、治療の効果などを確認します。
• Ｂ型肝炎や肝硬変などを伴っている時は、治療とさらに詳しい検査が必要です。
• 特に、慢性肝炎の場合は、長期にわたる診察が必要です。
• キャリアの場合は、将来発病する可能性がありますので、６ヶ月に一度は検査を受けた方が良いでしょう。
• また、Ｂ型肝炎ウイルスは血液や体液を通じて他人に感染するという事を良く理解し、日頃から下表に上げた事項に注意する事が、大切です。

• Ｃ型肝炎については、輸血による感染など、さまざまな事がわかってきましたが、Ｃ型肝炎ウイルス（ＨＣＶ）自体はまだ十分に解明されていません。
• しかし、感染すると血液中に抗体が出来るため、抗体の有無を調べると、感染しているかどうかがわかります。
• 現在、各種のＨＣＶ抗体検査が開発されて精度も高くなっています。
• 最近のウイルス遺伝子による検査法では、ウイルスの量や型を調べる事もできます。
• ＨＣＶの感染があると陽性になりますが、抗体は感染後一ヶ月で、血液中に現れるため、感染直後の検査では陰性でも、一ヶ月後に陽性になる事があります。

検査詳細情報

• 急性肝炎
• 慢性肝炎
• 肝硬変
• 肝癌

• 各種の血液検査や腹部超音波、Ｘ線、ＣＴ検査、腹腔鏡検査などを行い、慢性かどうかを調べます。
• Ｃ型慢性肝炎の症状はおだやかですが、知らぬまに肝硬変や肝癌に進行する事もあるため、長期の定期検査が必要です。
• 日常の生活上の注意は、前項のＢ型肝炎に準じます。

• ＣＲＰとは、体内に急性の炎症や組織の損傷があるときに、血清中に増える蛋白質の一種です。
• 肺炎球菌によって起こる肺炎の患者の血清中に多く見られ、肺炎球菌の一成分であるＣ分画と反応する事から、Ｃ−反応性蛋白（ＣＲＰ）と呼ばれてきました。
• ＣＲＰは肺炎以外の病気でも強い陽性を示す事があります。
• したがって、この検査だけでなく、他の検査と組み合わせて病気を診断します。
• 特に炎症や組織の損傷があるかどうかを調べるときや、病気の重症度を見るとき、病気の経過観察、治療後の判断などに大いに役立っています。

検査詳細情報

• 膠原病（慢性関節リウマチ、リウマチ熱等）
• 細菌感染症
• ウイルス感染症
• 心筋梗塞
• 悪性腫瘍
• 胆石症など

• 自覚症状や診察、他の血液検査、Ｘ線検査などを組み合わせ、まず正確な病態を把握する事が、大切です。
• 診断が確定し、有効な治療が行われ、治癒に向かえば低値になります。

• 慢性関節リウマチ(RA)のときに、血清中に出現するリウマチ因子(RF)を測定するものです。
• 種々の測定法があります。
• ＲＡテストの病気での陽性率は、次の通りです。

  慢性関節リウマチ	80%
  リウマチ熱	17%
  エリテマトーデス(SLE)	29%
  肝硬変	54%
  慢性肝炎	37%
  肝癌	28%
  結核	10%
  変形性関節炎	10%

  すなわち、慢性関節リウマチでの陽性率は大ですが、肝疾患などでも陽性率は高くみられますので、判定に注意が必要です。

検査詳細情報

• 陽性の場合
  • 膠原病：慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス
  • 心筋梗塞
  • 肝臓病：慢性肝炎、肝硬変、肝癌

• ＲＡテストで陽性と判定されたら、専門医を受診し、膠原病を中心として肝臓病の可能性も合わせた追加検査が必要です。
• また、ＣＲＰ、抗核抗体、抗甲状腺抗体、血小板抗体、抗平滑筋抗体の血清学的検査も行われます。
• さらに診察で発熱、関節炎、皮膚症などが認められれば、慢性関節リウマチと診断され、治療が必要になります。

• 扁桃炎や咽頭炎、中耳炎、猩紅熱など、炎症と化膿により高熱や手足の関節痛をおこす病原体として、溶血性連鎖球菌（溶連菌）が知られています。
• 溶連菌には１３群ありますが、ＡＳＯは特に重要なＡ群溶連菌に感染したときに出来る抗体の値を測定します。
• 溶連菌は赤血球を壊す（溶血させる）ストレプトリジンという毒素を出しますが、溶連菌に感染すると、血清中にその防御反応として、抗ストレプトリジン−Ｏという抗体ができます。
• そこで、患者の血清に溶連菌と赤血球を加えて、血清中にできる抗体の値を測定することにより、溶連菌に感染しているかどうかを調べます。

検査詳細情報

• 急性リウマチ熱
• 急性糸球体腎炎
• 猩紅熱
• 急性扁桃炎
• 慢性関節リウマチ

• 他の検査と組み合わせて診断しますが、溶連菌による感染症なら、抗生物質ですぐに治ります。
• しかし、リウマチ熱や急性糸球体腎炎の場合は、専門医による治療が必要になります。

• 梅毒とは、トレポネーマ・パリーズム（スピロヘータ・パリダ）と呼ばれる微生物によっておこる病気です。
• 代表的な性病の１つで、治療薬として抗生物質が登場して以来、患者の数は激減しましたが、近年では潜在的感染者が増えているといわれています。
• 梅毒は、おもに性交によって感染しますが、胎盤を通じて母胎から胎児に感染することもあります。
• 梅毒に感染してから約４週間以内ならば、感染していても検査では、陰性とでます。こうした場合には、臨床的に診断するか、時期を遅らせて再検査することになります。

検査詳細情報

• 梅毒
• 膠原病
• マラリア
• 妊娠時
• γ−グロブリン異常症など

• 定性検査で陽性と確定したら、次に定量検査でくわしい病態を調べます。
• その結果によって、抗生物質が使用されます。
• しかし、梅毒の病原体を完全に死滅させるには、大量の抗生物質を長期間使用しなくてはいけませんので、薬による副作用が考えられます。
• 治療に当たっては、自分勝手な処置をせず専門医の指示に従いましょう。

• ＨＩＶ抗体の検査は、エイズに感染しているかどうかを診断する検査です。
• 健康な人に体は、外からウイルスや細菌が侵入すると、免疫細胞がはたらいて抗体をつくり、それらを攻撃するしくみになっています。
• ところが、エイズウイルスの場合は、その免疫機構に重要な働きを果たしているヘルパーＴ細胞の中に侵入し、免疫機構を破壊してしまいます。
• こうして免疫機構が破壊されてしまうと、ふつうならかかりにくい病気に体をおかされて、死んでしまいます。
• その代表的なものが、カリニ肺炎や、肺や消化器に炎症を起こすカンジダ症などです。

検査詳細情報

• エイズ（後天性免疫不全症候群）

• エイズには、まだ特別な治療薬もワクチンもなく、いったん発病したら、残念ながら死を待つしかありません。
• 陽性者と判定されたら、出来るだけ不摂生を避け、体力の低下を防ぐことが大切です。
• さらに、体液による感染の可能性もあるため、日頃から下記のような生活上の注意を守りましょう。
  1. カミソリ、歯ブラシ、タオルなどを共用しない。
  2. 血液のついた物は、焼き捨てる。
  3. 血液や体液がついたら、石鹸でよく洗う。
  4. 性接触はコンドームをつけて。
  5. 自分勝手に注射しない。